資金繰り支援

1.モラトリアム法

中小企業等金融円滑化法、いわゆるモラトリアム法は2008年秋の金融危機以降、資金繰りが厳しくなった中小企業や、ボーナスの大幅ダウンで住宅ローンの返済が難しくなった個人を守り、「安心」を提供することを目的に、2009年12月に時限立法として施行されました。

実際にトップページで記載したように倒産件数自体には減少傾向が見られますが、非常に賛否両論のある法律で、問題を先送りしているだけではないかという見方もあります。 とは言え、元本の返済猶予や、返済期間の延長や借り換えなど、負担軽減につながるため、現状をなんとかしようと頑張っている経営者にはありがたい法律です。

モラトリアム法の下では、経営改善計画書を作成し、その内容に沿った経営を続けている限り、銀行はそれを無視することが出来ず、取引各行が足並みを揃えてリスケジュールを受けるという「努力義務」が存在します。また、改善計画がおおよそ80%の進捗を示している他、一定の要件を満たしていれば、いわゆる「不良債権」扱いにはならないよう指導されています。

リスケジュールを行いやすくなったとは言え、経営改善計画書は出せばよいというものではありません。現状の改善で忙しく、精神的な余裕も少ないかもしれませんが、これを機会に事業を冷静に棚卸し、具体的かつ実現可能な経営改善計画書を作っていくことをお勧めします。

また、日々の資金繰りを見直した上で実態にあった資金繰り表の作成や、場合によっては手形を小分けにしてもらい、そのまま支払いに回す(いわゆる廻し手形)にする等、状況に応じてのやり繰りも大切です。

2.中小企業倒産防止共済制度「経営セーフティ共済」の利用

中小企業倒産防止共済制度「経営セーフティ共済」は国(独立行政法人)の運営する、連鎖倒産を予防するための共済です。2011年10月の法改正施行により、取引先が倒産した場合に最大8000万円(掛金の累積の10倍)の資金を数年間、無利子・無担保・無保証人で借りることが可能です。

掛金月額は、5,000円からのため、経費負担が少なくて済みます。(※掛金の総額が少ないと借りれる資金も少なくなります) 掛金は20万円までの範囲(5,000円刻み)で自由に選べ、掛金総額が800万円になるまで積み立てられます。また、掛金は税法上、法人の場合は損金、個人の場合は必要経費に算入できます。

詳しくは独立行政法人中小企業基盤整備機構ホームページへ http://www.smrj.go.jp/tkyosai/

3.保証債務履行

純粋な意味合いでの資金繰り支援とは違いますが、保証債務履行という制度があります。 「経済状況が芳しくないし、後継者も居ない(もしくはやる気がない)ので、今のうちに個人資産を整理し、それを原資に負債を清算して身軽になってしまおう」と考える方も多いでしょう。この時にネックになるのが譲渡税です。社長や経営陣の個人資産を使っているので、譲渡税が不要だろうと思いがちですが、実は別物です。

例えば借入金が1億円あったとして、社長個人の土地が1億円とします。この土地を売却して、会社の返済に回した場合、譲渡税が2000万円近くかかることになってしまいます。この時に活躍するのが保証債務履行制度です。譲渡税には「保証債務を履行するために土地を売却し、求償権行使不能であれば、譲渡税は課さない」という特例があります。実際、埼玉地裁は2004年4月14日判決で税務署がこういった件で起こした追加徴税に対して、課税処分を全て取り消した実績があります。

なお、売却する際に建物も含まれる場合には消費税への注意も必要です。社長個人であれば、非課税事業者として逃げる道もありますが、法人として穴埋めのために売却した場合、建物には消費税が含まれます。その分も十分勘案する必要があります。上記のように判例があるとはいえ、専門家に相談し慎重に行うことをお勧めします。